ピロリ菌について
ピロリ菌は胃粘膜に感染し、胃・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃がんなど様々な疾患を引き起こす原因となります。特に、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎が胃がんの発症のリスクであると分かっていますので、注意が必要です。また、胃・十二指腸潰瘍は、感染したピロリ菌が残り続けることで、再発を繰り返します。ピロリ菌は適切な治療によって除菌することが可能で、様々な疾患の発症・再発防止が期待できます。これらの疾患の発症防止のため、40歳を超えたらピロリ菌検査や胃カメラ検査を受けることをお勧めします。
ピロリ菌感染症の感染経路
主に経口感染によるものと考えられています。以前は井戸水や湧き水など、衛生環境が整っていないところで水を口にすることが感染経路の主体でしたが、現在では飲用水に関する衛生環境が整って、感染者は徐々に減少しています。現在の日本の感染経路としては、感染者の両親や両祖父母からの経口感染が過半数を占め、乳児に食べ物を口移しで食べさせたり、スプーンや箸を共有したりすることが主なものではないかと言われています。
ピロリ菌感染症の症状
ピロリ菌に感染するだけでは、自覚症状が乏しいとされています。ピロリ菌感染を原因とする疾患の症状を認めやすくなります。
- 胸焼け
- 胃もたれ
- 胃痛
- 吐き気、嘔吐
- お腹の張り
- 食欲不振
ピロリ菌感染症の検査・診断
ピロリ菌の感染を調べる方法は、胃カメラを使用する方法と胃カメラを使用しない方法の2つに大別されます。
胃カメラを使用する検査法
胃カメラ検査にて胃粘膜の組織を採取し、感染の有無を調べます。
培養法
採取した組織を培養することで、ピロリ菌の感染有無を判定します。一番精度が高いと言われていますが、判定結果が分かるまでに時間を要するため、基本的には実施しません。
鏡検法
採取した組織をホルマリンで固定後、顕微鏡により目視で確認します。
迅速ウレアーゼ法
採取した組織を特殊な検査薬に浸し、色が変化すれば陽性です。すぐ結果がわかるというメリットがありますが、色調の変化が少しだと判定が困難です。
胃カメラを使用しない方法
胃カメラ検査によって組織採取を行わずとも、血液、便、尿、呼気から判定できます。容易に検査可能ですが、培養法などよりは精度が低いというデメリットがあります。
血清抗体および尿中抗体法
ピロリ菌に感染した場合、体内では菌に対する抗体が生成されます。尿や血液に含まれる抗体価を検査することで、感染の有無を確認できます。
便中抗原法
胃粘膜に感染したピロリ菌は、一部は便に混入することがあるため、便検査によって感染の有無を確認できます。
尿素呼気試験
検査薬の服用後に息を風船に貯めることで、呼気の成分から感染の有無を確認できます。