虚血性腸炎について
大腸への血流が一時的に阻害されることで大腸壁が虚血状態となって、粘膜に炎症、潰瘍を生じる疾患です。大腸の左側が好発部位で、左下腹部の痛みに下痢や血便などの症状を伴います。
虚血性腸炎の原因
以下のような要因が重なることで起こると考えられています。
- 動脈硬化による血流低下
- 高脂肪食などの偏食
- 運動不足
- 脱水による血流低下
- 便秘による腸管内圧の上昇
- 腸蠕動運動の過剰
虚血性腸炎の症状
- 腹痛
- 血便
- 下痢
上記症状がほとんどですが、重篤な場合は腸管壊死へ進展する場合があり、注意が必要です。
炎症が高度で腸管狭窄を来した場合は、腹部膨満、嘔吐を認めることもあります。
虚血性腸炎の検査・診断
血便、腹痛が典型的な症状であり、大腸がんや炎症性腸疾患と鑑別するため、大腸カメラ検査を行います。症状の程度により血液検査で貧血や、炎症の程度を確認します。当院では、経験豊富な日本消化器内視鏡学会専門医が大腸カメラ検査を行います。不安な症状などがあれば、早めに当院までご相談ください。
虚血性腸炎の治療
虚血性腸炎は数日で症状が治まることが多く、ご自宅にて安静にして頂く保存療法が基本となります。炎症が高度の場合は、抗生物質を用いた薬物療法を行います。ほとんどの場合、一過性の炎症のため治療は短期間となります。
炎症が高度のため大腸が狭窄する「狭窄型」や、腸管が壊死する「壊死型」の場合、手術を行うことがありますので、提携先の医療機関へ紹介いたします。
治療期間の目安
軽症の場合は1週間程度の食事の制限で改善します。中等症の場合は入院で1−2週間程度、重症の場合は狭窄や壊死を伴うことも多く、4週程度が必要です。
虚血性腸炎と似た症状をきたす疾患
虚血性大腸炎では、腹痛・下痢・血便が主な症状ですが、これらの症状は別の疾患でもよく見られます。手術や薬剤による治療が必要な疾患が多いため、大腸カメラ検査による確定診断が必要です。
大腸がん
虚血性大腸炎と同様に、腹痛や下痢、血便などの症状を認めます。症状のみでは判断ができないため、大腸カメラ検査が必要です。
潰瘍性大腸炎
大腸粘膜に炎症が発生し、びらんや潰瘍が形成される疾患です。虚血性大腸炎も大腸粘膜に炎症が起こる疾患であり、同様の症状を来します。なお、潰瘍性大腸炎は虚血性大腸炎よりも症状が長期間続き、虚血性大腸炎は急性の症状で自覚されます。
クローン病
口から肛門に至る消化管全体で炎症が発生し、潰瘍ができる疾患です。大腸粘膜に炎症が発生することで、虚血性大腸炎と同様に腹痛、下痢、血便などの症状が起こるため、大腸カメラ検査による鑑別が必要です。