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過敏性腸症候群

過敏性腸症候群について

過敏性腸症候群は、腹部の不快感や痛みとともに、便秘や下痢などの便通異常が長期間にわたって起こる疾患です。
命を落とすような重篤な疾患ではないものの、「電車やバスなど近くにトイレが設備されていない場所に長時間いられない」など、普段の生活に大きな影響を及ぼします。
発症原因は明確になっていませんが、近年行われた研究によると、ストレスにより脳下垂体からストレスホルモンが分泌され、この刺激により腸の運動に異常が発生し、症状が起こると報告されています。
また、大腸などの消化管の異常や生活習慣の乱れなど複数の要因が複雑に関与しているとも考えられています。

過敏性腸症候群の
症状

以下のような症状が起きている場合、過敏性腸症候群の可能性があります。

  • 腹部の不快感や痛みが1ヶ月以上続く
  • 便秘と下痢を繰り返す
  • 排便回数が一定でない
  • 突然の腹痛、下痢がおこる
  • 形状が崩れた便が続いている
  • 排便後に残便感がある
  • ストレスで症状が出現する
  • お腹がごろごろする
  • 会議、テスト、通勤などで腹痛、便意が出現しやすい

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群の原因はストレス?はっきりとした原因はわかっていませんが、症状を起こしているのは腸管が内容物(食事や便)を肛門へ運ぶ働きである蠕動運動の不足や過剰といった腸の機能障害だと考えられています。消化管の機能は自律神経がコントロールしていて、自律神経はストレスの影響を受けるため、緊張や不安、環境の変化、睡眠不足や過労などをきっかけに、発症しやすいと考えられています。

過敏性腸症候群の分類

下痢型

急激な腹痛とともに下痢が1日に3回以上起こります。排便後は症状が改善します。急激な症状が不安で外出できなくなり、ストレスや不安によって症状が悪化するという悪循環となります。

便秘型

腸管が痙攣して便が滞留します。排便時に腹痛が起こりますが、ウサギの糞便のようなコロコロとした便が出るのみで、排便しても残便感があるといった症状を認めます。強くいきまないと排便できないため、切れ痔やいぼ痔のリスクになります。

交代型

激しい腹痛とともに下痢と便秘が繰り返し起こります。

過敏性腸症候群の検査・診断

大腸カメラ検査

過敏性腸症候群の診断は、大腸の器質的疾患を除外するために大腸カメラを行います。異常が見られない場合、過敏性腸症候群を疑います。症状や便通を確認し、以下のRomeⅣ基準に基づいて診断します。

  • 腹痛が排便により軽減する。
  • 症状の有無で排便頻度が変化する。
  • 症状の有無で便の状態が変化する。

腹痛が最近3ヶ月の1週間につき少なくとも1日以上を占め、上記2項目以上の特徴を示す場合、過敏性腸症候群と診断されます。他の原因と鑑別するため、血液検査、大腸カメラ、便検査を実施する場合もあります。RomeⅣ基準を満たさなくても、総合的な評価に基づいて過敏性腸症候群と判断して、治療を行うこともあります。腹痛、便秘、下痢などの症状がある場合は、ご相談ください。

大腸カメラ検査

過敏性腸症候群の治し方

生活習慣の改善

生活習慣の改善は、過敏性腸症候群の症状を和らげるために重要です。良質な睡眠時間の確保と規則正しい生活リズムが大切です。また、症状悪化の原因となるアルコールや刺激物の摂取、喫煙には注意が必要です。生活習慣を急激に変えることや制限を守りすぎることは逆効果となり、ストレスを増加させかねません。無理なく続けることが効果的で、症状の改善につながります。
食事は、食物繊維が豊富な食品を意識して食べましょう。例えば、キノコ類や海藻類、バナナなどが挙げられます。便秘型の方は特にですが、腸内環境を正常化する乳酸菌を摂るようにしましょう。下痢型の方は脱水症状にならないように、水分をこまめに摂取するようにしましょう。水分は胃の負担とならないよう、常温か温かい飲み物がお勧めです。
ストレス解消や腸の前導運動の改善にため、適度に運動することも大切です。激しい運動は必要なく、習慣的に取り組める軽いウォーキングなどの有酸素運動から取り組んでみましょう。

薬物療法

生活習慣の改善で効果が得られない場合や、症状が強い場合、内服による薬物療法を行います。症状や原因は患者様ごとに異なりますので、それぞれの方に合わせて、処方内容の調整をします。薬の効果の現れ方にも個人差があり、有効な薬が数多く存在しますので、薬に関して気になることやご希望がありましたら、遠慮なくご相談下さい。
消化管の動きを改善する薬や、腸内フローラを整える乳酸菌や酪酸菌、便の状態を整える薬、漢方薬などを使用します。過度なストレスが原因となっている場合は、抗不安薬や抗うつ薬によって症状の改善につながるケースもあります。

過敏性腸症候群の時の
食べ物の注意点

食事内容の見直しによっても改善を認めます。

食物繊維について

食物繊維について食物繊維を多く含んだ食べ物、例えば、キノコ類や海藻類、こんにゃく、ごぼう、納豆、バナナなどを積極的に食べましょう。なお、過剰摂取は膨満感や下痢を起こすため気を付けてください。

低FODMAP食について

FODMAPとは、発酵性(Fermentable)、オリゴ糖(Oligosaccharides)、二糖類(Disaccharides)、単糖類(Monosaccharides)、ポリオール(Polyols)の糖類の頭文字をとった言葉です。過敏性腸症候群の患者様が、FODMAPが豊富な「高FODMAP食」を控えたことにより、症状が改善すると考えられています。
ただし、高FODMAPを控え、低FODMAPのみを食べておけば良いというわけでもありません。栄養バランスの整った食事とし、その上で低FODMAPを意識して食べることが重要です。高FODMAPの過剰摂取は控え、低FODMAPのご自身に合った食べ物を見つけることが現実的な対策です。

高FODMAP食

  • タマネギ
  • ニンニク
  • キノコ類
  • 小麦
  • 大豆、ひよこ豆などの豆類
  • ヨーグルト、牛乳、アイスクリーム
  • ハチミツ
  • スイカ、りんご、桃
  • キシリトールやソルビトールなどの人工甘味料

など

低FODMAP食

  • 魚介類
  • 米、玄米
  • 豆腐
  • ニンジン
  • ジャガイモ
  • バナナ

など

消化に時間のかかる食品・刺激物を避ける

高脂肪食、高カロリー食、香辛料、カフェインを含む飲料、アルコールなどは可能な限り避けましょう。

院長 和田 由大院長 和田 由大

院長 和田 由大Dr. Yudai Wada

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