大腸憩室について
大腸憩室とは
大腸憩室とは、大腸壁の薄い部分が大腸の外側に向けて小さな袋として飛び出している状態を指します。加齢や便秘によって大腸壁が薄くなること、腸内の圧力の上昇などが原因となります。そのため、ご高齢であるほど認める割合は大きくなります。基本的には経過観察で問題ありませんが、大腸憩室炎や大腸憩室出血を発症した場合は治療が必要となります。高齢化や食生活の欧米化によって、憩室炎や憩室出血といった大腸憩室疾患は増加しています。
大腸憩室の原因

大腸憩室の症状
大腸憩室自体で症状は認めません。大半の場合は大腸カメラ検査の際に偶然見つかります。
大腸憩室炎や大腸憩室出血などを発症した場合に症状が現れます。
大腸憩室炎について
大腸憩室炎とは
憩室に便が停滞し、感染、炎症を起こしている状態です。重篤となれば、腸管穿孔や膿瘍形成、膀胱と瘻孔を形成するなど、外科的治療が必要となる場合もあります。
憩室炎の症状
比較的強い腹痛と発熱が主な症状です。腹痛部位は大腸憩室の好発部位である右下腹部(上行結腸)、または左下腹部(S状結腸)に多くなっています。
憩室炎の検査
血液検査によって炎症反応を確認し、炎症の程度の評価をします。CT検査によって大腸壁の厚さや大腸周囲での炎症の有無を調べます。ただし、これらの検査では大腸がんを完全に否定できるものではないため、症状の収まった時期に大腸カメラ検査を実施する必要があります。
憩室炎の治療
腸管の安静と抗生剤の投与が治療の基本になります。軽症であれば、抗生剤の内服治療で改善します。中等症以上は入院して、絶食と抗生剤の投与となります。膿瘍形成など外科的治療を要する場合もあります。中等症以上の場合は提携先の医療機関へ紹介いたします。
憩室炎の食事について
大腸には腸内細菌が多数存在しており、善玉菌と悪玉菌のバランスが保たれることで腸内環境が整っています。しかし、悪玉菌の栄養源となる食べ物ばかり摂っていると悪玉菌が増え、腸管内でガスが増加して腸の機能が低下します。腸管機能が低下すると便秘を生じ、腸内に溜まった便が憩室に入り込み、憩室炎の発症リスクが高まります。
赤身肉(特に牛肉)
動物性脂肪が豊富な食品、例えば赤身肉(特に牛肉)などを摂りすぎると、大腸憩室の急性期だけでなく、安定期にも影響を及ぼし、憩室炎の予防にも良くありません。
1回の食事で動物性脂肪を多く摂取すると、肝臓で産生される脂肪分解酵素(リパーゼ)の分泌が追いつかず、消化が不十分のまま大腸に到達してしまいます。悪玉菌がこれを栄養源に増加し、大腸憩室炎を発症するリスクが増加します。
緑茶・コーヒー・ワイン
緑茶や紅茶、コーヒー、日本酒、ウイスキー、ワインなどには「タンニン」という物質が豊富に含まれています。タンニンを過剰摂取すると、腸に特殊な膜が形成され、蠕動運動が阻害され、便秘となり、憩室炎の発症リスクとなります。
キシリトールや人工甘味料
キシリトールガムなどの清涼感が強いガムに含まれるキシリトール、アスパルテームなどの人工甘味料は、胃や小腸などでは消化・吸収されにくく、大腸に到達します。これらを過剰摂取すると、悪玉菌が増殖し、腸内環境が悪化します。
大腸憩室出血について
大腸憩室出血とは
憩室の中の血管が破綻することで、大量の出血や血便を生じます。
憩室出血の症状
出血量が多いことがし憩室出血の特徴です。出血量が多い場合は貧血症状を認めます。腹痛を伴わないことが特徴です。
憩室出血の検査
血液検査と大腸カメラ検査を実施します。血液検査にて貧血の程度を評価し、大腸カメラ検査では出血箇所の特定と止血を実施するなど、検査と治療を並行して行います。大腸カメラ検査で出血している憩室が見つからない場合は、提携先の医療機関へ紹介し、血管造影検査や造影CTを検討します。
憩室出血の治療
大腸カメラ検査で出血箇所が特定できれば、医療用クリップで出血箇所の止血処置を行います。出血している憩室が同定できない、出血量が多いなどの場合は入院による出血源の検索(造影CT、血管造影検査)と貧血の進行の経過観察が必要となるため、提携先の医療機関へ紹介いたします。